【診療について】
●病状より脳脊髄液減少症を疑う場合●
◆急性期例(発症より数ヶ月以内)には、まず保存的治療(後述)を勧めます。若年者(主に10歳代以下)では特に大切!
頭部CT・MRI検査は、頭痛疾患の鑑別のために受けておくべきです。
◆慢性期例や保存的治療の効果が乏しい場合には、以下の検査を勧め、結果に応じて治療を考慮します。
【検査について】
●画像検査
①頭部CT・MRI
②脊髄MRI/MRミエログラフィー
漏出した髄液が硬膜外腔に貯留している所見(下図↑部)
(硬膜外水所見・floating dural sac sign)を観察する。
本所見を認める場合には、多量の髄液漏出がある場合が多いようです。
③RI脳槽・脊髄腔シンチグラフィー
④CTミエログラフィー
※③④は腰椎穿刺が必要
これらの検査を組み合わせて診断の補助とします。
それぞれの内容については文献(注1)や厚労省研究班の画像診断案を参照。
RI脳槽・脊髄腔シンチグラフィーおけるRIクリアランス、24時間後RI残存率などは今後の検討課題とされています。
また注意すべきことは、頭部MRIでは明らかな異常所見を認める場合が少なく、一般的に“異常なし“と言われても「脳脊髄液減少症」を否定できないと考えています。
●機能的検査
硬膜外生理食塩水注入試験
腰部硬膜外腔に生理食塩水を20〜30ml程度ゆっくり注入し、症状改善の有無を1〜2日間観察します。
【診断】
「低髄液圧症」「脳脊髄液漏出症」の診断は、厚労省研究班の診断案に従う。
「脳脊髄液減少症」について(当院の方法として):漏出疑いまたは不明瞭の場合
ⓐ症状・経過
ⓑ画像検査
明らかな漏出所見を認めなくても、RI検査において24時間後RI残存率25%以下(小児・若年者は20%以下)を目安として疑い症例と考えます。ただし、この数値は個人差・年齢差などがあるため、あくまで参考値とします。
ⓒ硬膜外生食水注入試験
上記ⓐⓑⓒの3つを考慮して、いずれについても所見を認める場合は、「脳脊髄液減少症」と診断します。
ⓐ症状で疑いのある場合に、ⓑまたはⓒの一方のみが陽性所見の場合には、疑い例として治療について注意深く判断します。特に、ⓑで漏出所見が乏しいにもかかわらず、ⓒで著しい改善効果を認める場合がありますが、ただちにブラッドパッチ治療の適応とはしません。またⓐ症状のみ疑いがあっても、ⓑⓒがいずれも否定的であれば診断否定とします。
※注1「小児・若年者の起立性頭痛と脳脊髄液減少症」金芳堂
「子どもの脳脊髄液減少症」日本医療企画